kumorinekoの雑記

東京在住、とりあえず始めます。

【実体験】雪山で体験した不思議な話2

初めての金縛り

待て待て、と皆口々に言った。

マジなの?嘘なの?どっちよ、と一気に目が覚めて、皆布団から身体を起こす。

するとMは

「マジマジ、さっき誰かが話てる最中に、そこの隅っこに人みたいなもん見えた」

と部屋の角を指差して言う。

全員が足側、入り口付近の部屋の左隅に注目した。「ちょうどその何かが消えたから、今言った」とMは付け足した。

「わかった!もうやめよう!」と怖がりのHが言う。私ともう1人のYも賛同し、不穏な空気のまま皆無理矢理布団の中に潜り込んだ。しばらくして、

 

「な〜んてね!びっくりした?」

 

とMが大きな声を出す。沈黙を破ったその声は大きく、3人ともビクッとなる。なんだよ、勘弁してくれよと笑いが起き、

「嘘だよ嘘、なんか盛り上がると思ってね」と笑うMの言葉にホッとする。「ま、とりあえず寝ますか」と、その流れでお開きとなった。

 

しかし。

 

時間も経たず誰かのイビキが聞こえてきた頃、私は妙に寝付けずにいた。全身が疲れているはずなのに何か気持ち悪い。

そして気がついた時には、全身が軽い痙攣の様になり動けなくなった。同時に、先程Mが指差した部屋の角に『黒い影』を目撃する。人型ではない、大きな三角形に近い形状だ。更に、不自然に頭がボーッとする感覚に見舞われる。耳に力を入れて低音でボーッとするあの感覚だ。夢の中でもない。

え?なんだろうこれ?何あれ?これが金縛り?

パニックほどでは無かったが、冗談だと言ったとはいえMの話の直後だ。

ただただ恐怖だった。

目だけは動かせたので、ギュッと目を閉じ、心の中でなんとなく念仏を唱え続けた。

 

その後は覚えていないが、疲れもあってそのまま寝てしまったんだと思う。

 

数年後に聞かされた本当の事

翌日。

帰りのバスはスキー場を夕方発なので、荷物を一旦休憩所に置き、時間いっぱい滑る計画だった。昨日の夜不可思議な体験をしたが、特に体に変な所も無かった。

 

ただ、私にはどうしても確かめたい事があった。

 

スノボーの最中、2人乗りリフトでMと一緒になった時、聞いてみた。2人乗りリフトという空間は、本音で語るには絶好の場所なのだ。

「昨日言ってたあれ、マジで嘘だったの?」

Mはなんだその事か、と軽い口調で

「うん、マジで嘘だよ、なんもない」

と言った。「なんで?」と聞き返され、「いや別に、本当に見たのかと思って」と昨日の夜の事は話さないでいた。

内心、なんだ、やっぱりそうかと寂しい気持ちにもなった。

 

ここでMを信じ切った私は、やっぱり昨日の出来事は一日中滑った疲れによるものだと確信した。大体金縛りの多くはただ疲れているだけで勘違いとよく聞くし、ボーッとするのもそれ、黒い影は単なる見間違い。

言質を取れたので、これを人に話すのはやめよう、そう思っていた。

 

 

そう思っていたのだが数年後。

 

 

今現在も付き合いのあるMではあるが、ある時何かで会った時に昔話になった。例のスノボーの話になる。

「あん時さ、お前嘘ついて場を凍らせたよな」

「ああ〜、あれね、よく覚えてる」

「あれ改めて確かめたもんな、リフトで」

「あ〜、あれさ、今更だけど、全部本当よ」

「ん?」

「だから、あの時幽霊見たってのマジ。マジで皆話してる最中部屋にいて、出てった。なんか確か、黒い影だった気がする。三角形の」