strawberry shortcakes
こんにちは。
上京して間もない頃、住んでいたのが中野という事が幸いしたのか所謂サブカル文化にどっぷり浸かった。用も無いのに中野ブロードウェイに赴き『まんだらけ』はじめ古い雑誌が売っている店などに足を運んだ。
とっくの昔に無くなってしまった2階にあるトンカツ屋にも何度か行った。こう綴ってみると、余計に懐かしい。
その頃知った漫画家の1人が、魚喃キリコ(ナナナン キリコ)氏だ。
例えば繊細なタッチでお洒落な雰囲気で云々など、あぁハイハイ、サブカル好き御用達の感じね、と嫌サブカル派(笑)には鼻で笑われてしまう漫画家かもしれないが、作者特有の地の文の数々に当時の私の心は持って行かれた。
特にお気に入りは『strawberry shortcakes(ストロベリーショートケイクス)』という作品の中の以下の文章だ。
ちなみにこの作品は強引に一言でまとめると『4人の悩める女性達の群像劇』なのだが、その中の1人、過食症のイラストレーター塔子が普段気丈に振る舞ってる反動なのか、不意に涙を流してしまうシーンから。
いくらどんなに気丈にふるまって強くあろうと思っても
少しでも隙を見せると
怒りや憎しみが
体の中からいっぱいに噴き出してくる
必死で踠(もが)く
あたしの心が安らかでありますように
強くありますように
最初の部分は少しカットしているが、この最後の部分「あたしの〜」は心が乱れそうになった時に頭の中で何度か反芻した事がある。
一見誰にでも思いつく様な簡単な文章に見えるが、それだけにストレートに突き刺さる気がする。
この漫画は特に女性ならハマるはずだ。
恐らく激しい共感と共に、胸を抉る様な痛々しさが途中でページを閉じさせてしまうかもしれないが。
ちなみに映画化もされていて、端正な顔立ちで美人の作者ご本人もメイン4人のうちの1人として出演している。漫画→映画で残念というパターンでは全くなく、映画としてとても素晴らしい。好きな漫画が映像化された時にその再現度が高いとその事に感動して涙してしまうという気持ち悪い癖があるのだが、まさにそれだった。
心の病が増えているとよく聞く昨今。
幸い私自身はまだ1度も無いが、誰しもいつどこで突然そうなるかわからない。もしかしたらなっているのに気付いてないだけかもしれない。
第2時世界大戦中の日本はむしろ、今より鬱病の人数が少なかったとどこかで読んだ気がする。常に命と向き合ってる状況は、それどころじゃないと人間を奮起させるとでも言うのだろうか。
だとしたら現代の平和な日本の現状は一体どういう状況なのだろうか。
と、偉そうなおじさんの独り言。
私の心も安らかでありますように。
強くありますように。