kumorinekoの雑記

東京在住、とりあえず始めます。

【実体験】幽霊に馬鹿にされた話4

Kの告白

……5体いる?5体って何?

その言葉を、俄には受け入れがたかった。Kはいつの間にか私に気を使ったのか、はたまた聞かれたくない事があるのか、スピーカー機能をオフにして母親と会話をしていた。

途中「え?マジで?……そうか、わかった」と思わず声が出てしまったりと、ただならぬ気配を漂わせるK。私も雰囲気に呑まれ、緊張は高まる一方だった。

しばらくして電話が終わり、聞きたいことが沢山あったが、私はKの言葉を待った。Kは「ふー」と溜息をひとつ吐き出し、どこから話せばいいものか、と何もない(いや、この時は何か存在してたのかもしれない)中空を見つめるK。「じゃ、まあ……」と、私に向き合い話し始めた。

 

まずは霊能者の話。

実は余りちゃんと話してこなかったが、Kにはやはり昔から所謂『霊感』と言うものがあると言う事だった。彼曰く先程まで電話で話していた母親譲りだと言い、本人よりも1つ上の姉(ちなみに私はKの姉のことも知っている)の方がより霊感が強いという。

K自身はそんなに強くないが、今までも『人間ではない何か』の存在を感じつつ、されどそんなに気にしないで生活してきた、と。あ、あれそうだな、いるなぁ、くらいの感じだと。

で、母親も姉も自分もそんな力がある為か、家族でお世話になっているある『霊能者』が先程の電話で私の部屋を霊視した人物だと言うのだ。

もちろん実際に会った事があり、その場で「これ今まで見せた事なかったけどさ」と言って、霊能者に貰って肌身離さず持っているというお守りの様な物をバッグから取り出し見せてもらった。様なもの、というのは、よくある布に包まれた手のひらサイズの長方形のそれではなく、手のひらサイズではあるが木で出来たサーフボードに近い形のものだったと記憶している。何かしらの文字が刻まれていた。

電話の際Kが思わず声を出して驚いたのは、母親の言葉だった。母親はたまたま3日前に霊能者と会っており、その際に、

 

「息子さん、ここ数日で能力がさらに開花しますよ」

 

と言われたばっかりだったと言うのだ。その事に関して、注意喚起とまではいかないが直接Kに電話しようとしていた矢先のKからのあの電話だったらしい。「母さんもビックリしてた」とKは言った。

具体的に『能力の開花』とはどういう事かはわからないが、より霊感が強くなって、よりハッキリ得体の知れないものの存在を感じれるという事だろうか。Kの母親が、息子から突然掛かってきたおかしな内容の電話に変な動揺もせずスムーズに話が進んだ理由がわかった気がした。

 

道中で見ていた『何か』と部屋の中の『黒い影』

 

Kは更に続ける。

これは私を下手に驚かせない為に黙っていた、と前置きをして話してくれたのだが、実は最初に私の家に訪ねてくる道の途中、奇妙な体験をしていたという。

私の部屋は最寄り駅から徒歩15分の微妙な距離にあったのだが、Kは私の部屋に向かう為歩いていると、真っ直ぐな道の向こう、数10メートル離れた所に人影を確認した。その人影は背中を向いているのでKと方向は一緒、Kから見て奥に歩いているはずなのだが、気がついたら背中を向けたままグン!グン!グン!とKに迫ってきたと言うのだ(!)。

えっ!と構えた時にはその『何か』は消えていたらしいが、Kにとっては割と日常茶飯事ではあるらしく、そこまで気にしていなかったとの事だった。

 

え、何それ、めちゃくちゃ怖いじゃん……と私が恐怖に慄いていると、「まだあるんだけどさ」と我が家の古い浴室の青いタイルの様な色の顔をした私にKはひっそり話し始めた。

 

Kが私の所に居候している間に、地元の仲間が遊びに来た時の事。

夜男3人で雑魚寝をしていたのだが、Kはその日寝つきが悪く、起きたり寝たりを繰り返していた。何か気持ち悪いな〜と開けっ放しの襖の奥のDKのスペースに、大きめの黒い影を見たと言う。

ぼやけていて輪郭は完璧には把握できないが、形としては三角錐というかおにぎりというかそんな造形。なんだあれ?とは思ったが、またしてもK、いつもの事だからと気持ち悪さを感じながらも寝てしまったという体験だった。

 

へえ〜そうなんだ、黒い影ね、そんな風に視えるんだね、霊感がある人は!

 

なんてリアクションが出来ない空気が、ひんやりと漂った。