藤井聡太5冠とうとう6冠に、そして
こんにちは。
以前言及したこちらが、いよいよ現実のものとなってきた。
しかし恐らく将棋に造詣が深いファンはそんな驚きはしていない。
今の実力からすれば想定の範囲内だからだ。
もちろん奪取した棋王のタイトルを保持していて、尚且つ4月から行われる名人戦の相手でもある渡辺明名人も歴史を変えるほどの大棋士だ。
歴史に名を残す様な棋士ではあるが、それだけ藤井6冠の力が飛び抜けているという事。
ただ幾多の番狂わせをして来た渡辺名人。ここらで強力なカウンターパンチをお見舞いして欲しい。その方が盛り上がるに違いない。
ところでタイトル戦とは別の所で、藤井6冠は同時にまたとんでもない偉業を達成している事はニュースでもあまり取り上げられていない。
タイトル戦と並行して、全棋士参加で基本トーナメント方式(つまり1度負けたら終わり)の棋戦で大きなものが4つある。
銀河戦、朝日杯、日本シリーズ(こちらは選ばれた棋士のみ参加)、そして毎週日曜日に放送しているNHK杯だ。
こちらもタイトル獲得に次ぐほど凄い記録だ。そしてこのままの勢いというか、藤井6冠は今後更に強くなると想定されるので数多ある将棋の世界の達成困難な記録の中でも恐らく最難関ではと言われる冠を頭に被せる可能性がある。
それは『名誉NHK杯選手権者』という称号だ。
実は将棋のタイトルには全てに『永世称号』というものが存在し、永世称号を獲得したタイトルはそのタイトルを失っても原則引退後に〇〇(自分の名前)永世〇〇(タイトル名)と名乗る事ができる決まりがある(新しいタイトルの叡王については不明)。
具体的に挙げると現会長で現役の棋士でもある佐藤康光9段は引退後に『佐藤康光永世棋聖』を名乗る事になる。
タイトルそれぞれ永世称号獲得に厳しい条件があり、例えばただでさえ獲得困難な『名人』の場合は通算5期、昨日藤井6冠が獲得した『棋王』は連続5期、先日羽生9段が藤井6冠に惜しくも敗れた『王将』は通算10期など、永世称号とは1つ獲得するだけでも本当に限られた人にしか達成できない、将棋界における最上級の勲章なのだ。
羽生9段はそのキャリアの中で叡王を除く7つ全てで永世称号を持っていて、『永世7冠』という空前絶後、前人未到の記録を持っている。
そしてただ1人『名誉NHK選手権者』という称号も獲得している(なので羽生9段の事を永世8冠と呼ぶ人もいる)。
これはタイトルとは別だが、獲得条件としては通算10回の優勝が必要で、早指しテレビ棋戦というやや特殊な環境で優勝する事自体大変な棋戦だ。それを通算10回。
鬼神の如く勝ちを積み重ねてきた藤井6冠だが、意外にも今期初優勝というのがその難しさを物語っている。
だがこのまま藤井6冠が突き進めば、そんな未来が見えてくるのだ。
かつて羽生9段が7冠を達成した際に周りが称賛の嵐の中、森下卓9段という棋士が「屈辱以外の何ものでもない」と1人闘志を燃やす発言をしたのは将棋界の中では有名だ。
時代も違うし、割と今の世の中どんな勝負事にも平穏な空気感を感じられるが、この藤井6冠に対して静かに大きな炎を燃やす棋士が出て来て欲しい。
羽生9段には先輩や同世代や後輩に、漫画の様なライバルが何人も存在し切磋琢磨を繰り返して筋書きのないドラマの主人公になっていた。
藤井6冠は間違いなく主人公だが、ドラゴンボールで言えばベジータ初登場時に悟空がすでにスーパーサイヤ人になっているくらいの状況になりつつある。
ファンとしては願わくば、勝てない相手に苦悩する姿も見てみたい。