プロの将棋の世界における『順位戦』について
こんにちは。
ここ数年の藤井聡太5冠の活躍で将棋に少しでも興味を持った人が増えたと思うので、将棋の世界における『順位戦』というものについてなるべく簡単に分かりやすく説明したい。
何となくニュースでこの言葉を聞いた様な気がするが、それって一体何?と思ってる人向けだ。
尚、諸々誤りがある可能性もあるかもしれないので先に謝っておきます。間違ってたらすみません。
下記でも言及しているが、プロ棋士は基本現在あるタイトル8つ、全棋士参加棋戦の予選を日々戦っている。
それぞれのタイトル・棋戦によって形は異なるが、大凡は1回負けると終わりのトーナメント方式だ。勝てば勝つ程対局は増えるし、上がっていけば行く程強豪とぶつかるのが必然だ。
その中で『順位戦』とはつまり、タイトルの1つである『名人』の予選なのだ。
8つタイトルには序列が存在し、歴史的に見ても『名人』は最高峰(もうひとつは竜王)に位置する、プロ棋士が目指す目標の頂点とも言える。
この『名人』の予選『順位戦』は他のタイトル予選とは一線を画し、自分がどのクラスにいるかで収入にも直結する。要はクラスによって給料が大幅に異なるのだ。
クラスは下からC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と5クラスあり、A級とB1は定員が決まっている。A級は10人で、B1は13人。130人程いる棋士の中で、このクラスに在籍している20名程が時のトップ棋士と言える。
以下クラスの現在の人数はB2が26名、C1が33名、C2が56名。
サッカーに明るい方は、J1がA級、J2がB級1組〜と考えると分かりやすいと思う。
まずプロ棋士になると自動的にC2のクラスに入る事になる。A級とB1はそのクラスに在籍している棋士と総当たり戦を行うが、B2以下は割り当てられた相手と約1年(6月から始まり3月まで=1期)を通して10戦行う。
B2、C1、C2は、成績上位3名が上のクラスに行くことができる。
B1は上位2名がA級へ。
A級での最高成績を収めたたった1名が名人に挑戦できる。
飛び級はないので、どんなに優秀でも1年に1クラスしか上がれない。
可能性としての話でしかないが、他のタイトル戦は勝ちまくればタイトル保持者に挑戦権獲得後、タイトルを奪取することは1年目の棋士でも可能ではあるが、こと名人戦においては最速で5年掛かるのはこの為だ。
最速5年で名人獲得まで達成した棋士はいないので机上の空論でしかないが、制度上ではそうなる。
というか、タイトル獲得程ではないが、B1やA級に1期でも在籍する事ができる棋士も限られる事になる。ましてや上位クラスに何十年も在籍するなど、トップ中のトップ棋士にしか成し得ない偉業だ。
何故なら当然上がる者もいれば、落ちる者もいるからだ。
少しややこしくなるので簡単に言うと、まずA級は2名、B1は3名がその期において成績下位が1発で落ちる事になる。
C2、C1、B2はそれぞれ成績下位(その時の在籍人数によって人数に変動あり、大凡6人〜10人)に『降級点』と言ういわばペナルティが付き、C2は累積3回、C1とB2は累積2回で降級となる。つまり降級を免れるチャンスがあるわけだが、A級とB1にはそれが無い。1発とはそういう事だ。
『降級点』は挽回するチャンスが設けられいるのだが、あくまで簡単にということでこの辺りの説明は省く。
そしてC2で『降級点』を3回累積してしまうと『順位戦』の参加はできなくなり、フリークラスという所に所属することになる。
ではフリークラスになったら復帰できないかと言われるとそうではなく、ある一定条件を満たすと再びC2に復帰できるのだが、こちらも説明を省く。
ここまでをまとめると、
・『順位戦』はタイトル『名人』の予選
・『順位戦』のクラスは5クラス
・『順位戦』は昇級と降級がある
ざっくりこんな所だろうか。
ちなみにここまで読んで下さった方で将棋に明るい方は「一番重要な所言ってないなこいつ」と思われるかも知れない。
それは、何故『名人戦予選』という名前ではなく『順位戦』という名前なのか、そしてその醍醐味だ。
長くなってしまうのでその辺りはまた今度に譲るとして、兎にも角にも『順位戦』というのは色々な意味で棋士にとって重要なのだ。
他の棋戦を捨てて、『順位戦』に全勢力を注ぐ棋士もいるだろう。
ちなみに羽生さんはA級に登り詰めるまで8年掛かり、A級に連続での在籍が29年だ。
藤井5冠は5年でA級、今期名人挑戦まであと1歩という所まで来ている。
数年前、羽生が名人だった頃の冗談が『順位戦』という制度を知ると恐ろしくも笑える。
「A級に落ちると大変なんですよ」
A級に”落ちれる”のは『名人』たった1人しかいないのだ。