kumorinekoの雑記

東京在住、とりあえず始めます。

将棋『棋王戦』、藤井5冠が2勝目

こんにちは。

 

昨日将棋のタイトル戦の1つ『棋王戦』の第2局が行われ、藤井聡太5冠が渡辺明名人に勝ち2勝目、あと1勝で『棋王』のタイトルを獲得する。

 

凄まじい。

 

藤井5冠はプロデビュー前から注目されていて、デビューから29連勝という華々しい活躍を飾る辺りから度々メディアで更に注目度が増していった。だから名前くらいは知ってる人は多いのではなかろうか。

しかし将棋に興味の無い人にとってはまず『将棋棋士』が何故凄いのかわからないと思うし、タイトル戦?へー、また勝ったのね凄いね、というくらいの感想しか抱かないのも理解できる。

という事で簡単に『将棋におけるタイトル戦』が如何に困難かに絞って、一応10年くらい将棋界を見てきた私なりに分かりやすく書いてみたい。間違ってる所があったらすみません、先に謝っておきます。

 

どこにでも書かれている事だが、まずプロの将棋棋士になる為には師匠に弟子入りし、『奨励会』という養成機関の様なものに入る事から始まる。

既にここで、かなりのハードルを越えなければなければならない。というのも、奨励会に入る事ができる人間というのは全国各地で『神童』と言われる様な将棋に特化した人間達だからだ。

無事奨励会に入る事ができたら、全国から集まってきた猛者達と勝負の日々が待っている。6級から始まり、各階級規定の勝利を上げていった者のみ次の階級へと歩を進める事ができる。

2段まで登り詰めると、最終的に3段リーグという地獄のリーグが待っている。奨励会3段というのはほぼプロ棋士と同等の力があると言われている。そんな猛者達の中勝ち上がり4段になって晴れて『プロ将棋棋士』になれる。年間で4人しかプロになれない。

 

プロになってからも、更に過酷な勝負が続く。

全国の神童が集まった奨励会を勝ち抜いた超猛者達が凌ぎを削っているのがプロの世界だ。

基本的には、各タイトル戦や全棋士参加の棋戦(例えば代表的な棋戦の1つにNHK杯戦がある)の頂点を目指して予選を戦っているのが日常だ。全てのタイトル戦、全棋士参加棋戦は1年間サイクルだ。

現在タイトル戦は8つある。

それぞれに異なる予選方式があり、各棋士異なるタイトル戦の予選を同時進行で戦っている事になる。予選方式は様々だが、大体は1度負けると終わりのトーナメント方式だ。常に異なった甲子園で優勝を目指している事になる。

各棋戦の予選を優勝したたった1人、その先に待っているのはタイトルホルダーだ。

タイトルによってこれまたタイトル獲得条件や持ち時間が異なるのだが、おおよそは1日制、持ち時間3〜6時間、先に3勝した方がタイトル獲得の棋戦と、2日制、持ち時間8〜9時間、先に4勝した方がタイトル獲得の棋戦がある。

 

と、ここまで本当にざっくり説明したが要は『タイトル戦の挑戦者になる』だけでもとんでもなく凄い、という事だ。

プロ棋士として立派な肩書きだし、生涯勲章として刻まれる。

実際、タイトル戦の挑戦者になれる棋士は一握りだ。引退するまで1度も挑戦者になる所まで行けない棋士がほとんどである。

ましてやタイトル獲得ともなると、それこそ選ばれし者しか達成する事ができない。

 

1996年、羽生善治9段(現在)は当時あったタイトル戦を総なめにして7冠を達成した事でかなり話題になった。上記を踏まえると、如何にとんでもない事だった事がわかると思う。ちなみに恐らく将棋にある程度興味がある人しか知らないと思うが、この時実は前年に6冠となり最後の『王将戦』の挑戦者まで登り詰めたものの、時の谷川浩司王将に敗れて惜しくも7冠制覇とはならなかった経緯がある。

しかし翌年保持していた6つのタイトル全ての挑戦者を返り討ちにし、更には再び王将戦の挑戦者になり、尚且つ前年敗れた谷川王将に見事リベンジを果たしたのだ。

羽生さんはその後も将棋界を牽引し、獲得タイトルを99期にまでのばしている。長きに渡り、群雄割拠の将棋界に置いて絶対王者として君臨していた。

繰り返すが、タイトル戦の挑戦者になる事自体限られた人間しかできない非常に困難な事なのだ。

今後羽生さんの様な人間は100年は出てこないと言われていた。

誰もがそう思っていた。

だがしかし、そこで彗星の如く現れたのが藤井聡太5冠だった。

数々の記録を塗り替え、現在の将棋界の絶対王者として君臨している。

運命なのか、その新旧『絶対王者』同士が羽生さんが7冠を達成した『王将戦』で現在タイトル戦を戦っている。今の所2勝2敗、先に4勝した方がタイトルホルダーとなる。羽生さんが獲得となれば合計100期という節目だ。

タイトル100期……あり得ない記録だ。

今後この記録を破る可能性があるのはただ1人。

藤井聡太5冠だ。

藤井5冠は並行して冒頭の『棋王戦』(つまり勝ち抜いて挑戦者になっている)も戦っており、このまま棋王を奪取し、羽生さんから王将位を見事防衛し、今期の順位戦名人戦というタイトル戦の予選みたいなもの)を勝ち抜き挑戦者になり、更に渡辺名人から名人位を奪取する様な事があれば、一気にかつて羽生さんが達成した7冠になる可能性がある(この可能性が割と高い確率なのが恐ろしい)。

絶対王者vs絶対王者』。

漫画だったら読者を惹きつける為に無理矢理にでもやりたい展開である。

しかしこれは、羽生さんが紛れも無く実力で勝ち取ったタイトル挑戦なのだ。

細かい説明は省くが、王将戦の最終予選として6人の総当たり戦が行われる『王将リーグ』というものがある。このリーグはタイトル戦の予選の中でもリーグに入るだけでも最難関クラスと言われており、それを勝ち抜いてようやく挑戦者になれる。

羽生さんは今期、この『王将リーグ』で全勝を飾って挑戦者になったのだ。

 

将棋の世界は知れば知る程面白い。

創作の様なドラマが、実際に日々繰り広げられている。

私が将棋界をよく知らなかった頃は、誤解を恐れずに言えば『お堅い人たちが老人の趣味をパチパチやっているルールは知っているゲームの世界』程度でしかなかった。

だが将棋棋士は実に個性的な人種の集まりで、人間的に魅力がある人ばかりだと知った。

 

とにかく将棋界のタイトル戦は、その舞台に立てるだけで凄い事、という事を知ってもらいたい。