魚沼産コシヒカリ
こんにちは。
昔友達が出演者として参加する小規模な音楽のイベントで、そのフライヤーを描いて欲しいという依頼があった。
専門学校でイラスト専攻をしていてたまにほんのり絵を描く程度で全然大した物はできなかったが、お礼として魚沼産のコシヒカリ30kgをもらった。
主催者の実家がお米農家だったらしく、友達を通してせめてものお礼でという事だったが、決してそれに見合う出来ではなかったのでかえって申し訳ない気持ちになった。
数日後、自分では絶対に買わないあの茶色い袋に入ったお米がドカンと届く。
どうやら精米までしてくれてあって、それ故27kgという説明書きまであった。
実はお米を頂く前から「せっかくなら良い炊飯器で炊こう」と決意し、上京時に買った1人用の小さな炊飯器を捨て初めてジャパネットを利用し3万円程する新品の炊飯器を用意したり、『魚沼産コシヒカリ』について少し下調べをしてあった。
この時初めて知ったのだが『魚沼産コシヒカリ』とはよく聞くが、まぁ何というか種類が沢山あって奥が深い。
大きく分けて『北魚沼産』『中魚沼産』『南魚沼産』がある事すら知らなかった。
偽物・本物なんて概念もあるみたい。
諸々の条件などによってこの3つの中では『南魚沼産』が特に美味しいとされ、更にその中で『塩沢地区』で育った物は特別らしい。
そしてこの時貰ったお米はその『南魚沼産コシヒカリfrom塩沢』だったのだ。
ネットで見た通り、少し米粒が小さい。
それを30kg……。
普段は5kgで1番安いお米をスーパーで買っていたので、レベルで言ったら5段階くらい上がっただろうか。正直全然食通でもないし、どちらかと言えば何でも美味しく感じてしまうバカ舌だと自覚はあったのでますます良いお米を送ってもらった事に申し訳なく思ったが、せっかくこの為に買った炊飯器で早速炊いてみた。
いつもより正確に水の量を測り、いつもより出来上がり時間が待ち遠しかった。
やがてお待ちかねの炊きあがり。
艶とか香りとか食感とか……覚えているのは美味しかった事だけ。
でも何でも美味しいと思えてしまうバカ舌の、表現ができないけど他のお米とは明らかに違いのある「美味しかった」は本当に何かが違う証だ。
水道水ではなくちゃんとした水を使い、飯盒炊爨をしたら更なる高みに達していたかもしれない。
流石に男の1人暮らしで30kgは持て余すので、家族や友達にお裾分けした。
一様に良い反応が返ってきた。
恐らくこの時からだ、お米をジップロックに入れて保管する様になったのは。
そう、高級なお米だと知って少しでも保存状態を保ちたい、虫の発生なんて絶対嫌だと普段は気に留めなかった事をやりだしたのだ。
お米はもちろんあっという間に無くなってしまったが、あの時買った炊飯器とお米をジップロックに入れて冷蔵庫にしまう習慣は10数年経った今も変わっていない。