kumorinekoの雑記

東京在住、とりあえず始めます。

【実体験】幽霊に馬鹿にされた話6

薄れて行った恐怖

結局その夜、何かの意地なのかわからないがいつも通り電気を真っ暗にして寝ることにした。

午前中に得体の知れない『何か』が5体いると言われた部屋で過ごす一夜は、それまでに通過してきたどの夜よりも緊張感に溢れていた。

真っ暗な部屋を意味もなく見渡してしまう。

何もない。

誰もいない。

1度目を閉じては、また少し開けての繰り返し。目を開けた時に目の前に何か現れるのでは、なんて余計なことを考えてしまう。

 

だが結局、特に何も無いまま朝を迎えることになった。

そしてその後も、自分家で何かが起こるというものは無かった。

 

 

それからしばらく、当然あの『声』が入録音されたテープを再度再生する事はしなかった。やはりどうしても怖かったのだ。家に置いたまま、お寺や神社に持っていってお祓いの類やどこかに祀るなんてこともしなかった。

押し入れの中に放置して、半年も経つ頃には次第に恐怖も薄れていった。

 

新たな発見

いつどのタイミングかは覚えていないが、恐らくあの日から半年程は経過していたと思う。ある日何気なく、またあのテープを聴き返してみた。

 

「〜以上、レースでした(ばぁぁぁああか)

 

問題の箇所には、やはり紛れもなく『声』は残ったままだった。ある時はアルバイトの連中に一連の出来事の話に加えてこのテープを持って行き、みんなに聴かせたりした。リアクションは様々ではあったが、一様に作り物ではない事はわかってもらった。

1度慣れてしまうと何度も繰り返し聴いたりしてしまうもので、問題の箇所以外の所も度々聴くようになった。そして当時は全然気が付かなかったが、よくよく聴いてみると他の箇所にも、何やら不可解な部分がいくつかあった。

 

そもそも確かテープは連続で30分〜1時間ほど連続で録音出来、例えば私とKで下らない会話を10分録音し、停止。次はまた別の日に停止した所から録音。つまり1本のテープに、つぎはぎで色々なものが収められているのだ。もちろん気に入らなければ巻き戻して、上から音声を重ねて録音すれば問題ない。

 

所々に、『あ』とか『ぼ』とか、はっきりとした言葉ではないが、明らかに私とK以外の存在が感じられた。

そして何より1番不可解だったのは、

 

浜崎あゆみの歌の一節が録音されていた事』

 

だった。私かKが何やら喋っている途中で間もなく突然、当時流行っていた曲が差し込まれていたのだ。時間にして5秒〜10秒程だったと思う。テレビの音を拾ってるわけではなく、完全にCD音源。それがまた突如途切れ、私とKの喋りに戻る。録音された音量からすると、目の前でコンポなどから流れた音声をダイレクトに受け止めている感じだ。

そもそもこれに気が付いたのは、まだ家から外にテープを持ち出したりする前だったはずだ。仮に記憶違いで外に持って行った時に(それでも可能性がかなり薄いが)、何かのタイミングで浜崎のCDが流れている時にテープレコーダーの再生ボタンが押され、すぐ停止ボタンが押される……そんな事、あるだろうか。

 

音楽は好きだったので割とCDは所有していたが、私の家には浜崎あゆみのCDは1枚も無かった。もちろん別段ファンでもない。

この音源は、どの時空を経由して、あのテープに差し込まれたのだろうか。あの時存在していた『何か』が、特別な力を持ってして浜崎を通して訴えたい事でもあったのだろうか。

全くもって不可解だった。