お前、今じゃないだろう
こんにちは。
ふと思い出した高校の時の話。
私は未経験ながら、何となく面白そうという理由で友達とバドミントン部に入った。
ところが入ってみたらとんでもない激しいスポーツで、体験入部たるもので延々走らされて初日に20人程いた体験者は次の日には7、8人になっていた。
結果的には3年間全うする事ができ、大した成績も残せなかったがそれはそれで良い思い出になった。
2年の時だったか。
一緒に入部した友達と私自身はあまり後輩に先輩風を吹かせる様な性格では無かったので、友達感覚で部活が終わった後後輩数人と体育館に遅くまで残り何やかんや遊んでいた。
その中に、私達と同じく未経験で入ってきた後藤君という後輩がいた。
彼は決して運動神経抜群というわけでもなく、比較的おとなしい部類の性格で練習や試合でも冷静というか、悪く言えばやる気や負けん気が足りないところがあった。
ある日いつもの様に部活終わり、他の部活の連中も居なくなって体育館は自由になった。
バスケットボールを取り出し、チーム分けして負けた方に罰ゲームを課す形で適当にバスケが始まった。
終始ワイワイやっていたのだが、私がいるチームが負けた。その中に後藤くんもいた。
「うえー、罰ゲームか何やらされんのー」なんて負けた我々チームが談笑していると、後藤くんが神妙な面持ちで近づいてくる。
声を荒げて後藤くんが言った。
「先輩!!悔しいっす!俺悔しいっすよ!」
彼の目には涙が溢れていた。
バスケに負けたことが親の仇の様に泣く後藤君。
普段バドミントンでは「あれ?こいつやる気ないのかな?」と周囲に思わせていた後藤君。
彼には内に秘める情熱があったのだ。素晴らしいじゃないか。
後藤君。
でもお前、今じゃないだろう。