kumorinekoの雑記

東京在住、とりあえず始めます。

彼方から届いたバレンタインチョコ【お題参加】

今週のお題「手づくり」

 

こんにちは。

 

手づくりといえば時期的な事もあって真っ先に思い浮かぶのは何の捻りも無しに『バレンタインチョコ』であるのだが、そう思った時高校の時に貰った手づくりバレンタインチョコを何となく思い出した。

ただ思い返してみると、あれがは本当に私に向けられた贈り物なのかわからないのだ。

数十年の時を経て、自分なりに考察してみたい。

場所

まずチョコが置かれていた場所だ。

私は高校には自転車で通っていた。広く大きな高校で自転車置き場も数ヵ所に存在していたと記憶しているが、私が自転車を止めていた場所は所定の自転車置き場ではなく体育館の横、大きな木が数本立っているマイナーな場所だった。

というのも私はバドミントン部に所属していて、部活が終わった後スムーズに帰れるので部活仲間と共にいつの頃からかその場所が恒例になった。

あの日、チョコが入っていたのはそんな所に置いてある私の自転車のカゴの中だったのだ。

これはつまり、数人しか置いていないレアな自転車置き場に私が止める事を知っていないと不可能である事がわかる。

自転車の数

私と同じ様にその場所に自転車を止めていたのはせいぜい2、3人。もちろん全く見た目が同じ自転車では無い。

つまりチョコを渡す側は誰がどの自転車に乗っているか視認をしていないと、ターゲットのカゴの中に想いが詰まった箱をカップインする事ができない。

メッセージの有無

この時確か、休み時間のタイミングで自分の自転車に『何か』がある事を確認している。遠くからだったが、『何か』が入っていたのだ。

ウブだった当時の私は「え?そうだよな?もしかして?え?うそ」と、友達とその近くを通りながら自分の鼓動の音を確かに聞いた。形状、日にちからしてバレンタインチョコに間違いない。だがその場では平然を装い、帰りに改めて確かめようと一旦泳がせた。

ここでウブだった私は「こいつ(友達)にバレンタインチョコを貰った(であろう)事を知られたくない」と何故か思った。そこでまた別の休み時間にこっそり自転車の所に行き、ササッとバッグに入れた。

ショーシャンクの空に』のアンディからの贈り物の中身を確認するレッドの様に、周りをキョロキョロ見ながら。

 

家に帰って確かめた。誰からなんだろう。どんなものが入っているんだろう。そんな自分に好意を寄せている女の子なんていたか。気付かなかったか。

思いが複雑に交錯し、それとは裏腹に簡単な包装で包まれた袋を開けると、そこには丸い形状の手作りチョコレートが入っていた。

しかし……どこかで期待していた、手紙などは入っていない。何のメッセージも無い。思い当たる節も無い。手に持ったチョコレートが指を茶色く侵食しても尚考えたが、結局誰からの物なのかさっぱりわからなかった。

バレンタイン後

誰が私にくれたのかは気になっていたが、誰かがわからないとお返しをする事もできない事も気になっていた。心の何処かで「実はあれ……私なの」という展開も実はかなりの確率であるのではないかと期待していたが、取り越し苦労で終わった。

要はその後、チョコレートの様な甘い物語は何も無かった。

可能性の話

自分がターゲットでは無い場合を考える。

単純に入れるカゴを間違えたか、何処ぞのモテ男が貰ったいらないチョコを適当に私のカゴに入れたか、本当は別の人に渡すつもりだったが恥ずかしくてえーどうしようだめだやっぱできないいいやえい!とゴミ箱の代わりが私の自転車のカゴだったか。

どちらにせよ、メッセージが無いのだ。他の誰か宛てだという確証が無い。

 

自分がターゲットだった場合を考える。

何の気持ちも入ってない単なる義理チョコなら、別に手渡しでいいじゃないか。そもそもちゃんと包装して、手作りだ。義理チョコでも手作りはあると思うが、自転車のカゴに入れるなんて、それはむしろ恋する乙女の純粋な照れ隠しではないのだろうか。

メッセージが無かったのは「気付いてるでしょ、いつもあなたを見ている私からです」というメッセージではないのか。

……そうだ、そうに違いない。

なんて愚かなんだろう。あの時の私は、そんな健気な無言のメッセージに気付かなかったのだ。

タイムマシーンでこの時に戻れたら、胸ぐらを掴んで今判明したこの答えを自分に言ってやろう。

 

そう、誰がカゴに入れたか確かめた後に。