多摩霊園の奥、岡本太郎『午後の日』
こんにちは。
先日、妻の免許更新の手続きに着いて行った。
府中にある免許センターまで足を伸ばしたのだが、更新手続きの間やる事が無かったので何かこの辺あるかな、とGoogleマップを開いた。
すると、あるじゃないかすぐ隣に。
これまで何度も府中免許センターには来ていたのだが(私の運転免許最終試験場でもあった)、この時まで全然知らなかった。
多摩霊園。
私はかつて、大人になったら1人でやってみたい事のひとつに『1人でお墓参りに行く』という目標を掲げた事がある。決して大それた事ではないが、中学生か高校生の私には1人で線香を持って先祖の墓参りに行くという行為が、大人としての階段を1歩上がる事に思えたのだ。
何より、お墓の雰囲気はどこか落ち着く。怖さを感じた事は無い。他の人はどうなんだろう。
その場で調べて初めて知ったのだが、多摩霊園には多くの有名人のお墓があった。東京に住んで20年以上経つが、知らない事ばっかりだなあと改めて思う。
その中に、昔から尊敬している岡本太郎氏のお墓もあるではないか。川崎や南青山の美術館、大阪の万博記念公園に足を伸ばしている程度ではあるが、これは不覚だと思った。
と言うか、こんな所にお墓があるなんて、と思った。
そのまま、歩道橋を渡り早速多摩霊園に向かって歩き出す。
歩きながら何となくスマホで調べると、とにかく広大な敷地でとんでもなく広い事はわかった。
正式な入口?がどこかもわからない。
私が敷地に入場したのは、多摩霊園の東側(多分)、ちょうど真ん中辺りだった(多分)。
広い。ひたすらに広い。
その日は天気も程良く、平日で特に何の日でも無いのが幸いしてなのか、私以外にほとんど人の姿は無い。見かけるのはお墓を整備している職人らしき人と、犬の散歩をしている近くに住んでいるだろう人くらいだった。
スマホのサイトマップと、霊園の地図を頼りに岡本太郎氏のお墓を探す。
え?今自分がいるのは一体どこ……?
地図を読むのは苦手ではないが、同じような地形の連続なので時々わからなくなる。それにアスファルトの道以外は全て誰かのお墓の敷地に見えてきて、容易に足を踏み入れるのを躊躇わせる。こんなに広いお墓は初めてだ。
更に『区』『穂』『側』『番』と、弾丸で来た人間には少々わかり辛い表記で区分けされている(これは私の常識不足の可能性大)。
ちなみに目指す岡本太郎氏は『16区、1穂、17側、3番』にあるらしい。
なるほど……。
区や側や番は何となく分かる気がするが、穂の空気感。
途中、長谷川町子氏のお墓を通り過ぎた。形は変わっていたが、日本を代表する漫画家のお墓にしては少し寂しい気がした。手入れはされているのだろうか。
そんなこんなで迷いながら、何とか目的地のお墓に辿り着いた。
静謐な雰囲気の中、インパクトのある佇まい。あらかじめ写真で確認はしていたが、他のお墓とは一線を画す墓石。『午後の日』という作品らしい。
小さな石段を上がると、いつの物かはわからない花がそっと添えてあった。
同じ敷地には、ご両親の墓石もある。
線香を持って来なかった事が悔やまれるが、目を閉じて合掌した。
帰りに歴史的人物のお墓を何となく眺めながら、妻から連絡あったので再度迷いながら入って来た所に急ぎ足で戻る。
いつかまた来ようと思った。
また1人で、今度は線香を持って。